なぜ製薬会社が石垣島で農業?
今回やってきたのは石垣島。ここでとある大手企業が「やえやまファーム」という農業法人を作って運営していると聞いて取材に訪れました。その大手企業とは、目薬などで有名なロート製薬!
製薬会社がどうして条件不利地域である沖縄の離島で、農業に参入したのでしょうか。
観光地として人気の石垣島という名前を使って、観光客相手に農産物の販路拡大ができるという期待があるからでしょうか?
でも、大企業が参入することで、他の既存農家に影響はないのかな?
いろいろと疑問が湧いてきたので、代表を訪ねることにしました。

やえやまファーム代表取締役社長、中家勝則(なかいえ・かつのり)さんにお話を聞いてきました
コバマツ
健康には食は絶対必要不可欠じゃないですか。だから、食のことを考えると1次産業は外せないと思って農業に参入することになりました。
やえやまファームの理念は「人を良くする、人から良くする」。
心身共に健康でない人が、社会の事、未来の事まで考えるのはなかなかできる事ではないと思っています。だからこそ、人のからだの健康と心の健康が地球や環境の健康、そして良い未来にもつながっていくと考えています。
中家さん
コバマツ
中家さん
コバマツ
やえやまファームでは主に、有機パイナップルや、島トウガラシ、熱帯果樹、パイナップルの搾りかすを与えた「南ぬ豚(ぱいぬぶた)」や石垣牛など地域農畜産物を生産しています。
中家さん

日本国内では希少な有機パイナップル

パイナップルの搾りかすを食べて育った南ぬ豚
中家さん

ベニイモやシークワーサーを活用した発酵バタースプレッド
島で循環型農業をするワケ
コバマツ
外からモノを入れなくていいような生産方法を実践し、島で排出される残渣(ざんさ)も捨てずに活用して、できるだけ循環する仕組みを作りたいと思っているんです。
まずは、やえやまファームでそのモデルを作って、それを島内全体、ゆくゆくは日本全体に広げていきたいと思っています。
中家さん
コバマツ
自社でパイナップルジュースを搾汁した後のパイナップルの残渣も廃棄するのに手間とお金がかかるので、自社で豚の飼料として活用することで、コストカットにつながる。コストカットだけではなく、おいしくなってブランディングにもなる。
中家さん

やえやまファームの循環の図
コバマツ
石垣島だけでもそれだけ活用できるものがあるんだから、日本全体で考えると、活用できるものがたくさんありそう……! それをお金をかけて廃棄するのはもったいないですよね。
社会情勢に振り回されない持続可能な生産モデルを、まずはこの島から作っていきたいですね!
中家さん
コバマツ
やえやまファームでは農産物の加工も行っていますが、そこでも何か新しい取り組みをしているのですか?
中家さん
コバマツ
農業者だけじゃなくて、そこに飲食業、ホテル、行政、加工業者を集めて、情報交換でき、一緒に地域の6次産業化を考えるようなコミュニティーを作り始めています。
中家さん
コバマツ
中家さん

島内のパイナップル農家から仕入れて作ったパイナップルジュース
コバマツ
商品企画や開発技術や品質保証なども、その知識を持った人材が豊富にいる企業だからこそできることでもあると思うので、企業ならではの強みを生かして、地域農業に貢献していくことができればと思っています。
中家さん
コバマツ
中家さん
コバマツ
内地のバス会社と組んで、やえやまファームの農園を参加者の方に向けて配信して生産者のリアルを知ってもらうツアーをスタートさせました。リアルの農園ツアーだと、参加費が1人1時間1500円程度ですが、オンラインツアーでは事前に商品を5000円程度購入していただき、それを自宅で食べながらオンラインツアーに参加してもらいます。
オンラインでは参加者が100人でも同時に対応できるので、農家メンバーとしては繁忙期に時間が取られずに1回で50万円ぐらいの売り上げになるため、忙しい農家にとても良い手法を開発できたと思っています。コロナは大変でしたが、逆に1つの商品や事業に頼る危うさにも気づいて、いろいろと挑戦していくきっかけになりましたね。
中家さん

オンラインで生産現場について発信するやえやまファームの生産者
コバマツ
島の外から来る人の知恵やスキルも農場の発展につながる
コバマツ
最近、農場に働きにくる人も、内地でさまざまな経験を積んだ人が多いんですよね。農場で働いてもらいつつ、マーケティングや販売などの彼らのスキルも生かしてもらって、農場を発展させていけたらと思っています!
中家さん
コバマツ
石垣島で大手企業が農業に参入している、と聞いて最初は、「企業が島の農地をどんどん買って、栽培面積を増やしたりして、島の農家をつぶしてしまうのでは?」ということを考えていました。しかし、企業が参入することで、個人の農家ではできない、農産物の販売やブランディングなど、資金やスキルが必要な面でむしろ力になれるのだなと思いました。
生産面だけではなく経済的にも、持続可能な農業のモデルを生み出すには企業の参入も一つの方法として必要だと感じました。