私たちの食と農業のつながり
普段私たちが食べているご飯やパン、お肉、サラダからスイーツ。これらはすべて、農業という産業が土台となり、口にすることができています。コンビニやスーパーで気軽に食べ物を買えるのも、農家の手によって育てられた野菜や果物、家畜があるからです。
しかし、今の日本は食料自給率が徐々に低下しています。食料自給率を測る指標には、食料の量を食べ物に含まれるエネルギー量で計算するカロリーベースと、食料の価値を金額で計算する生産額ベースの2種類があります。
2022年度食料自給率
- カロリーベース食料自給率:38%
- 生産額ベース食料自給率:58%
カロリーベース食料自給率が38%ということは、日本人が摂取する食料のカロリーのうち、62%を海外からの輸入に頼っていることを意味します。
一方、生産額ベースの食料自給率は58%と、約5割以上は国内産となっています。これは、輸入される食料の価格が国内産に比べて安いためであり、決して自給率が高いことを表しているわけではありません。
ジュニア農林水産白書では、これら日本の食料事情や農業の現状、食料自給率の向上に向けた取り組みなどを紹介しています。私たち一人一人が食料問題について真剣に向き合い、日本の農業の未来について考える必要があることが分かります。
日本の農業が今抱えている悩みや課題
日本の農業は、人手が足りなくなっていたり、お金がかかって大変だったりと、さまざまな悩みを抱えています。主な理由は次のようなものです。
農家の減少と高齢化が進んでいる
2000年には約240万人いた農家は、2023年になると約116万人まで減ってしまいました。また平均年齢は68.7歳になっており、高齢化が進んでいるのが分かります。農家を継ぐ若い人が減ってしまい、慢性的な担い手不足の状態が続いています。
肥料や農薬、燃料、飼料などの価格が高くなっている
農産物を作る上で欠かせない肥料や農薬、燃料、家畜に与える飼料などの価格が高くなっていることも深刻な問題です。農家が負担するお金は大きくなる一方、作物を売る値段を上げるのが難しい傾向にあるからです。
作物を作るお金はこれまで以上に必要になっているのに、買われる値段が以前と同じでは、農家を続ける人が少なくなるのも分かるでしょう。農業を支えるために私たち消費者にできることは、国内産の農産物の価値を理解し、適正価格で購入することです。
農業を続けるための挑戦! テクノロジーを活用する「スマート農業」
農家を継ぐ人の不足や高齢化が進む一方で、ロボットやコンピューターを活用する「スマート農業」が注目されています。白書にはスマート農業の実例として、自動的にピーマンを収穫するロボットが登場しています。重労働である収穫作業を自動化することで、農家の負担を大幅に軽減しています。その他の例としては、ドローンを使った農薬散布があります。広範囲に効率的に農薬をまけるので、作業時間の短縮に貢献しています。
スマート農業は高齢化の進む農家の負担を軽減するだけでなく、新たな農業の担い手のサポートとなることも期待されています。
環境にやさしい「有機農業」への取り組み
有機農業は、地球環境にやさしい農業として注目されています。有機農業とは、化学肥料や化学農薬をなるべく使わず、環境への負担を軽減する農法です。これまで捨てていた資源を肥料として活用することで、ゴミを減らせます。また、有機農業をしている畑や田んぼ、その周りでは、生き物が増えたという報告もあります。
有機農業はこれまでの栽培方法とは異なる点が多く、安定した生産体制を築くのが難しいという問題もありますが、豊かな食生活をこれからも続けていくため、環境を守る取り組みとして拡大が進められています。
小さな一歩が農業を支える! 私たちにできること
「自分が農家になって農業を支えよう」と動くことは、なかなか簡単ではありません。しかし、今の私たちにできることはたくさんあります。
たとえば、以下のような取り組みや心がけです。
農業を体験して食の大切さを学ぼう!
農泊などを利用して、田植えや稲刈り、野菜の収穫など、実際に農業を体験してみましょう。食べ物がどのように作られているのか、農家の仕事や工夫を身をもって知ることで、食に対する意識を高められます。
食品ロス削減に積極的に取り組もう!
日本の食品ロスの量は、年間1人あたり約38キロにのぼります。これは毎日おにぎり1個分の食材を捨てているのと同じことです。私たち一人一人が食品ロスの削減を意識することで、この状況は改善できます。具体的には、商品棚の手前にある賞味期限が近い商品を優先して買う「てまえどり」や、冷蔵庫の中身を把握してムダなく食材を使い切ることなどが挙げられます。
これらの小さな一歩は、日本の農業を支え、持続可能な社会の実現に近づける役割を果たします。
農業はこれからも日本の大切な産業
日本の農業は、私たちが食べて生きる上で欠かせない産業であり、維持しながら発展させていくことが重要です。
「ジュニア農林水産白書」をもとに、日本の農業で何が起きているのか、家族で話し合ってみるのはいかがでしょうか。農業を体験できるイベントに出かけてみるのもよいでしょう。
食べ物がどのように作られているのかを知り、農業の大切さを学ぶことは未来の日本を支えることにつながります。
また、農林水産省では、農業をより身近に感じられるよう「こども農林水産省」という特設ページを開設しています。こども農林水産省では農業に関するクイズやなぞときなどを用意しているので、楽しみながら農業に触れてみましょう。
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