精進料理をファストフードに革新、湯葉で健康とおいしさ両立
「サポートしていただいた家族や出資先への恩返しができて、率直に嬉しいです」と個人部門の最優秀賞に輝いた喜びを語る渡邊尋思さん。事業開発に専念するため、半年前に勤めていた会社を退職。「今後、法人化してビジネス部門でも勝てるように精進します」と抱負を述べました。
提案したのは、働く現代人が第一に食べることを楽しみ、栄養バランスも考慮されたクイックミールを提供する、京生湯葉を用いた創作精進料理のファストフードブランド「yuppa(ゆっぱ)」です。このビジネスアイデアは、現代の日本人が抱える健康課題への洞察から生まれました。「女性の低栄養による痩せと中年以降の男性の肥満が問題になっています。多くの人が健康的な食生活を望みながらも、忙しさや面倒さを理由に実践できていません。また、健康食には味気ないイメージがあり、食事の楽しみが失われることへの抵抗感も強くあります。これらのバリアを取り除く必要があると考えました」と渡邊さん。
yuppaの特徴は、伝統的な一汁三菜の献立をワンハンドで食べられる形に再構築したことです。精進料理をベースにすることで、低脂質・高タンパク、野菜豊富という特長を維持しながら、栄養素全体を考慮した設計で食後の眠気も抑制。和風テイストにとどまらず、さまざまなフレーバーを展開することで、健康志向のオフィスワーカーから、ベジタリアン、ムスリムまで幅広い層にアプローチします。
食品会社で健康食品の開発や新規事業を手がけ、実家では精進料理店を営む渡邊さん。そのバックグラウンドを活かしたビジネスです。商品のトライアル販売では、特に20~30代の女性から「想像の100倍美味しかった」「ヘルシーなのにボリューム満点!」という好評価を得ています。
「店を持つことを目指したわけではありません」と渡邊さん。「私たちが実現したいのは、健康に遊び心を持たせることです。食事本来の楽しさを健康的な食品にこそ取り入れるべきだと考えています。健康がエンタメになるような世界を作りたいです」とビジョンを語ります。
フードテック業界への思いも語ってくれました。
渡邊尋思さん
最後に起業を目指す人々へ、「事業を創造することが自分の天職だと気づきました。皆さんも温めている企画があれば、ぜひ挑戦してください」とメッセージを送ってくれた渡邊さん。間もなく都内に開業するyuppaで、近い将来はグローバル展開も描いています。