食品廃棄物のアップサイクル素材でプロダクトを価値化する
「食品を作らない我々の取り組みはフードテックに括られにくい分野ですが、こうした場で評価していただけるのは非常に貴重で大変ありがたいことです」と語るのは、ビジネス部門で優秀賞を受賞した株式会社fabula(ファーブラ)の町田紘太さん(同社代表取締役CEO)です。
今回、食品廃棄物から新素材を作る自社技術で、廃棄物処理の課題解決に貢献したいとの思いで、このビジネスコンテストに挑戦。食品廃棄物を建築資材やデザイン製品にアップサイクルする事業の提案を行いました。
野菜や端材、抽出後のコーヒー豆などの食品廃棄物は、「乾燥」「粉砕」「圧縮成形」の工程を経て新素材に生まれ変わります。乾燥方法は日干し、風乾燥、冷凍乾燥などから選択し、粉砕では粒の大きさや形状を調整、圧縮成形には工業技術を応用します。条件を最適化することで多様な特性を持つ素材を製造することができます。「この素材は100%食品由来で、樹脂を使用せず安全で環境に優しい点が特徴です。強度や耐水性に優れ、白菜由来の素材ではコンクリートの約4倍の強度を持つものもあります」と町田さんは説明します。さらに、食品本来の色や香りを活かしたものもあり、建材やデザイン製品の素材として幅広い用途が期待されています。
「廃棄物をいかに価値あるものに変えるかが、私たちの事業のコンセプトです」と町田さん。「サステナブルだから買うのではなく、デザイン性や機能性で欲しいから選ぶ。そんな価値基準が当たり前になれば、きっと世の中はもっとハッピーになります」と語ります。そこで大切にしているのは、社名fabula(ラテン語)の意味である「物語」です。食品がゴミになるまでのストーリーの続きを作りたいという思いが込められています。
今後の展望として、地域密着型の循環モデルの構築を掲げます。「地域の中での循環を重視し、製造装置の開発も含めた小規模な仕組みづくりを目指しています」と町田さん。「例えば、これまで廃棄せざるを得なかった白菜を買い取り、新しい製品に変える。そうすることで、農家さんの新たな収入源を創出し、地域経済に貢献できると考えています」と語ります。
他社の取り組みからも刺激を受けているといいます。ビジネスコンテストに参加する意義についてこう聞かせてくれました。
町田紘太さん